奈良の薬膳茶で「わたしに戻る、いつもの5分。」
2025.5.30
sillo 早川輝美さん

奈良市を拠点に、ロゴやパッケージ、ホームページなどのデザインを手がける早川輝美さん。イラストレーターの夫・潤さんと共にデザイン事務所を営む一方、奈良の特産品を活かした薬膳茶ブランドを立ち上げ、注目を集めています。今回は、そんな早川さんの働き方や大切にしている価値観についてお話を伺いました。
──これまでデザイナーとして活動されてきた早川さんが、薬膳茶のブランドを立ち上げたきっかけを教えてください。
私は奈良がとても好きなのですが、お土産がワンパターンで「もっとバリエーションがあったらいいのにな」「いつか自分でお土産を作れたらな」と思っていました。そんな折、お茶農家さんから「お茶を作るだけで手一杯で、販売にまで手が回らない」という話を聞き、自分が売る側として役に立てないかと考え始めました。
実は、奈良は大和茶の産地であり、日本の生薬の発祥地でもあります。そこで、お茶と生薬を組み合わせれば、薬膳茶が作れるのではないかと閃いたんです。薬膳茶は日持ちするため、ロスの心配が少ない。これならデザインの仕事とも両立できそうだと思い、本気でブランドを立ち上げる決意をしました。

──現在販売されている商品は、「肩こりさんの薬膳茶」「冷え性さんの薬膳茶」といったユニークなネーミングですが、どのような由来がありますか?
薬膳茶と聞くと、敷居が高いと感じる方もいるかもしれません。そのため、なるべく気軽に手に取っていただけるような親しみやすい名前を付けました。「肩こりさん」「冷え性さん」といった具体的な症状を名前に入れることで、薬膳茶を「自分ごと」として身近に感じてほしいという思いもあります。
──未経験から薬膳茶のブランドを立ち上げる上で、特に大変だったことは何ですか?
薬膳を専門的に勉強していたわけではないので、知識がないことが一番のネックでした。ただ、ゆっくり勉強していてはいつ商品化できるのか見通しが立ちません。そのため、漢方茶を販売している知人に相談し、オリジナルブレンドのレシピを5種類開発してもらいました。

また、食品を取り扱う上で必要な衛生管理や届出に関する知識もなかったため、保健所に足を運び、担当者の方に直接教えていただきました。すると、奈良市の場合、仕入れた茶葉と生薬をブレンドして販売するだけなら特別な設備が不要とのことで、すぐに届け出て販売開始できました。
最初は購入してくださる方がいるか不安でしたが、予想以上に多くの反響をいただき、まさに嬉しい悲鳴です。忙しいときは、友人に袋詰めなどの作業をお願いすることもあります。
──商品の宣伝は、主にInstagramを活用されているのでしょうか?
そうですね。デザインの仕事の合間で薬膳茶の営業活動に十分な時間を割くのは難しいので、まずはInstagramのフォロワーさんに商品を知っていただくところからスタートしました。
最近は地域のイベントにも参加していますが、それもデザインの仕事を通じて知り合った方とのご縁があったからです。デザインの仕事と薬膳茶のブランドで、いい相乗効果が生まれていると感じます。

──ブランドを運営する上で、大切にされていることは何ですか?
このブランドを立ち上げたきっかけは、「奈良のお土産を作りたい」「農家さんの役に立ちたい」という自分本位なものでした。また、お茶農家さんと出会ってから数か月で準備を進めたため、薬膳茶のコンセプトをしっかりと考える時間も取れていませんでした。しかし、ブランドをより成長させるためには、お客様の視点を第一に考えなければなりません。
そこで改めて、「わたしに戻る、いつもの5分。」というコンセプトを設定。忙しい毎日の中で、お茶を淹れるたった5分だけでも、自分の時間を持ってもらいたい。そんな思いを軸にブランドを展開しています。
──ブランドのコンセプトもお一人で考えられているのですか?
はい。ブランディングを外部に依頼する方法もありますが、私の場合は「ブランドを一から育ててみたい」という思いがあったため、自分で考えるようにしています。
コンセプトを考える上では、「どんなブランドに育てていきたいのか」という思いを巡らせる時間を作るよう意識しています。思いついたことをメモして、考えて、じっくりと深めていく──。地道な作業の繰り返しです。この経験は、きっとデザインの仕事にも活かせるだろうと思っています。

──仕事を通して、一番やりがいを感じるのはどんなときですか?
私はお節介気質なところがあるので、純粋に誰かの役に立てたり、喜んでもらえたりしたときにやりがいを感じます。デザインでも薬膳茶でも、お客様に直接感想をいただけるのがすごく幸せですね。
──逆に、仕事で大変だと感じる場面はありますか?
毎日の時間の使い方は、私にとって永遠の課題です。特にデザインの仕事では、夜遅くまで作業に没頭する日も少なくありません。2人の息子がいるので「ちゃんと見てあげられているのかな」と自己嫌悪に陥ることもあります。
そんなときは、寝る前にオセロをしたり、週末に30分だけキャッチボールをしたりと、短い時間でも具体的な行動で「大切に思っているよ」という気持ちを伝えるようにしています。

──早川さんの今後の目標を教えてください。
薬膳茶のブランドを事業としてしっかりと育てていくことです。5年後くらいには、デザイン事務所とお茶の販売スペース、そして何かにチャレンジしたい人たちが気軽に使えるレンタルスペースが一緒になった拠点を持ちたいと思っています。
将来的には、お茶の本場であるヨーロッパでも、オリエンタルなハーブティーとして奈良の薬膳茶を販売してみたいですね。
──最後に、自分らしい働き方や生き方に迷っている読者へメッセージをお願いします。
これまでの経験を通して痛感しているのは、やはり行動することの大切さです。私も20代〜30代前半の頃は、失敗を恐れてなかなか行動できない性格をコンプレックスに感じていました。ですが、人生は一度きり。そして、自分が心配するほど他人は小さな失敗を気にしていません。
今はInstagramなど、小さく始めて大きく育てるためのツールやプラットフォームが充実している時代です。何かやりたいことがあるなら、小さな一歩を踏み出してみると、思いがけないご縁が生まれたり、新しい道が開けたりするはずです。
sillo 薬膳茶とスパイス

